Introduction

イントロダクション

エメ

Aimer

ロミオ(古川 雄大/大野 拓朗)

ジュリエット(生田 絵梨花 [乃木坂46]/木下 晴香)

ロミオとジュリエットの美しい愛を奏でるデュエット

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の劇中ナンバー解説の中でまず最初にご紹介するのは、やっぱりこの曲!
1幕ラストにロミオとジュリエットが歌うラブソング《Aimer(エメ)》です。

代々敵対関係にある、モンタギュー家とキャピュレット家に生まれたロミオとジュリエット。
ロミオが親友のベンヴォーリオとマキューシオに誘われキャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込み、そこでジュリエットに初めて出会います。2人は互いに素性も知らないまま一目で運命的な恋に落ちてしまうのです。

若い2人の恋心は純真がゆえに一心に突き進み、さまざまな障害をものともせず結びつき、固い愛の絆で結ばれます。
2人を見守っていたロレンス神父は、この2人の切なる想いに心打たれ、これが敵対する両家の関係を変えると信じ、礼拝堂で密かに結婚式を挙げる手助けをします。この結婚式の場面で2人が歌うのが《Aimer(エメ)》です。

「Aimer(エメ)」はフランス語で「愛する」という意味。英語でいうと「Love」にあたります。

恋の始まりのように静かに始まる序盤から徐々に盛り上がっていくこのナンバーは、ロミオとジュリエットの愛そのもの。
この世の中でなによりも美しく強い“愛”を手に入れたロミオとジュリエットが見つめ合い、「この命果てようとも2人の魂だけは引き裂けない」と歌いあげる美しいデュエットはまさにこの作品を象徴する1曲なのです。

世界の王

Les Rois du monde

ロミオ(古川 雄大/大野 拓朗)

ベンヴォーリオ(馬場 徹/矢崎 広)

マーキューシオ(平間 壮一/小野 賢章)

ほか

若者の勢いをダイレクトに感じるヒットナンバー

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が生まれたフランスで初演時にシングルカットされ大ヒットを記録したのがロミオたちとモンタギューの若者たちが歌う《世界の王》。
1幕の前半、ジュリエットと出会う前のロミオが親友のベンヴォーリオ、マーキューシオらと日々青春を謳歌している場面で歌われます。

ビートのきいたロック調の音楽に乗せ
「俺たちの王は俺たちなんだ!」
「朝から夜まで 全ての時間を 生きてる 今感じ 愛し合いたい」
と、これから先に何が待ち受けていようとも“今を全力で生きる”、怖いものなしのロミオたち。
若者のまばゆく、熱いエネルギーが感じられるナンバーです。
これまでの公演でも、この場面では自然と拍手が起こってしまうくらい観客も楽しい気分にさせてくれます。
一度聞いたら、耳から離れず思わず口ずさんでしまうほど、ロミオとジュリエットが歌う《エメ》とはまた違った魅力を持つ、印象に残るナンバー、場面といえるでしょう。

また、楽曲の魅力はもちろん、このナンバーでは、歌とともに披露されるモンタギューの若者たちの躍動感あふれるダンスパフォーマンスにも注目!
ロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオら親友たちの仲の良さも微笑ましく映るのではないでしょうか。

ヴェローナ

Vérone

ヴェローナ大公(岸 祐二)

ベンヴォーリオ(馬場 徹/矢崎 広)

マーキューシオ(平間 壮一/小野 賢章)

ティボルト(渡辺 大輔/広瀬 友祐)

ほか

一気に作品の世界へ引き込む

イタリア、ヴェローナ。
モンタギュー家とキャピュレット家、力を持つ2つの家柄が敵対し、若者たちの抗争が絶えない街。
ここでロミオとジュリエットが出会う──。
《ヴェローナ》はこれから始まるふたりの悲しい恋物語のオープニングを彩るロックミュージカルにふさわしいパワーを持ったナンバーです。

ここはヴェローナ/いとしいヴェローナ/愛する代わりに/憎しみが満ちる

長年続く憎しみの連鎖に心を痛めるヴェローナを治める大公が、若者たちを紹介していきます。

モンタギューのベンヴォーリオ、マーキューシオ、キャピュレットのティボルトら若者たちの血気盛んな姿がそのまま表現された力強いダンスパフォーマンスと音楽で客席を一瞬にしてヴェローナへいざなうこのナンバー。
シェイクスピアの戯曲をミュージカル化するにあたり、プレスギュルヴィック氏は「誰がどの家の人間でどんな人物なのか、曲を通じて伝えること」に特に気をつけたと語っています。
それは、実際にナンバーを聞いたら感じていただけるでしょう。
モンタギュー、キャピュレット両家の主要人物たちのキャラクターをすっと理解することができ、みなさんがヴェローナでこれから起こる出来事の目撃者となる準備も整っていくはずです。

天使の歌が聞こえる

L'amour heureux

ロミオ(古川 雄大/大野 拓朗)

ジュリエット(生田 絵梨花 [乃木坂46]/木下 晴香)

運命的に出会った2人の想いが響きあう

1幕中盤の、ラテン調のリズムが印象的な、これから何かが起こることを予感させるようなナンバー《舞踏会》から、ストリングスが響くロマンティックな曲調に変わったとき、ロミオとジュリエットはついに運命的な出逢いを果たします。
そして、デュエット《天使の歌が聞こえる》へ──。

じつは、《天使の歌が聞こえる》というタイトルや、2人が互いの高まる想いを高音に乗せて歌う、「天使の歌が響く~」という歌詞にある、“天使”という言葉、フランス版の歌詞には登場しません。
(フランス版のナンバータイトルは「L'amour heureux(幸福な愛)」)
このナンバーは、大胆な意訳なのです。

実際にこのシーンでこのナンバーを聞いたら、若い二人が出会ってすぐに恋に落ちた、ロマンティックな雰囲気をさらに盛り上げる、まさにぴったりの表現だと納得。
小池修一郎のさすがの手腕が光る1曲です。

いつか

Un Jour

ロミオ(古川 雄大/大野 拓朗)

ジュリエット(生田 絵梨花 [乃木坂46]/木下 晴香)

愛に憧れる純粋な2人

1幕序盤でロミオとジュリエットがまだ見ぬ運命の人を思って歌うスウィートなナンバー《いつか》。

デュエット曲ですが、実際にはこのときにはまだ出会っていない2人。
互いにこれから出会う運命の愛への憧れを、2人の純粋な気持ちを表すかのような、きれいなメロディーラインに乗せて歌います。

いつか愛し合う時が来る──
死が訪れてもずっと愛し合う──

誰もが若いころに憧れる理想の恋、そして愛。
かつてを思い起こしながら、2人に重ねてみると、このあとの展開にまた新たな発見があるかもしれません。

僕は怖い

J'ai peur

ロミオ(古川 雄大/大野 拓朗)

ロミオが抱える不安──

1幕前半に歌われる、ロミオのソロ《僕は怖い》。

親友のベンヴォーリオとマーキューシオたちとエネルギッシュな姿を見せた《世界の王》《マブの女王》に続くナンバーであるこの曲。

前の2曲が「陽」ならばこの曲は「陰」といえるかもしれません。
感情を抑えた低温で歌う静かな始まりから、待ち受ける未来に苦悩し嘆く高音のシャウトへ。
ロミオの繊細で複雑な心のうちを見事に描きだしたメロディーラインは圧巻です。

親友たちと自由で楽しい日常を送り、勢力の中心であるモンタギュー家を継ぐ者として輝かしい未来が約束されていながらも、ひとり逃れられない何かに怖れ、不安を感じているロミオの心情が観ている者の心に流れ込んでくるような1曲です。

愛の為に

Par amour

ロミオ(古川 雄大/大野 拓朗)

ロレンス神父(坂元 健児)

若い2人を見守るロレンス神父は…

1幕後半、ロミオとジュリエットを見守るロレンス神父が歌う《愛の為に》。

敵対しているキャピュレット家の娘ジュリエットと恋に落ちてしまったモンタギュー家のロミオ。
彼はその想いを、家族でも親友でもなく、信頼のおけるロレンス神父に打ち明けます。

ジュリエットと急速に惹かれあうロミオ。2人の愛がヴェローナじゅうを混乱させることは間違いないと考えた神父は「恋心が人を狂わせるのだ」と、一度は思いとどまらせようとします。
しかし、ロミオの「愛なしでは生きていけない」という心からの言葉、そして何より、純粋な2人の愛の姿を目の当たりにし、この結婚が新たな未来につながるのではないかと、若い2人を応援することを決めるのです。

ロミオの若さと繊細さが込められた歌声と、神父の力強く温かみもある低音の歌声のコントラストが耳に心地よい、ほかのナンバーとは一味違う雰囲気のロミオと神父のデュエットです。

憎しみ

La Haine

キャピュレット夫人(香寿 たつき)

モンタギュー夫人(秋園 美緒)

《憎しみ》の向かう先は──

一族に生まれた子どもが最初に覚える言葉は憎しみ

『ロミオ&ジュリエット』の物語は、若者たちを中心に進みますが、1幕前半に登場する、キャピュレットとモンタギュー両夫人によるデュエット《憎しみ》のように、大人たちも重要な場面で存在感のある落ち着いた演技、確かな歌唱で作品に深みを加えていきます。

2人の夫人は、個々が抱える想いを歌います。

まずはキャピュレット夫人がシェイクスピアの原作には描かれていない、甥・ティボルトへの熱い気持ちを。
続いて、モンタギュー夫人が大切な息子ロミオへの想いを。

ですがナンバー後半に向けて、本当に伝えたい想いがあふれてきます。
それは、男たちの中にある長く続く「憎しみ」に向けての想い。

私たちの言葉にも耳を貸してほしい──

互いのソロナンバーから2人の歌声が重なり、悲しくも力強く響きあう歌声に、胸が熱くなります。

ティボルト

Tybalt

本当の俺じゃない

C'est pas ma faute

ティボルト(渡辺 大輔/広瀬 友祐)

ティボルトの心の声

キャピュレット卿の子供は娘のジュリエット1人。ジュリエットの従兄弟であるティボルトはキャピュレット家を継ぐ者としてモンタギュー家への敵対心を幼いころから人一倍植えつけられて育ってきました。なにかあれば、キャピュレットの若者たちの先頭でモンタギューへ怒りをぶつけています。

原作で知られているティボルトは、そんな負の感情ばかりが目立つ、気性の荒い若者として描かれていますがこの『R&J』では、反面心の内にさまざまな思いをかかえるナイーブな青年として描かれています。
ティボルトのソロナンバー、1幕で歌う、《ティボルト》《本当の俺じゃない》では

自分を殺して生きてきたけれど 抑えきれないこの胸の思い ──《ティボルト》

復讐の手先になんかなりたくはなかったんだ ──《本当の俺じゃない》

密かに想いを寄せるジュリエットに本当の自分の姿を知ってほしいと心からの願いを切々と歌い、2幕の《きょうこそその日》でも、さらにティボルトの心の叫びは続きます。しかし、そんな彼の心の内は届くことがないまま、“あの出来事”に続きます──。

街のうわさ

On dit dans la rue

ロミオ(古川 雄大/大野 拓朗)

ベンヴォーリオ(馬場 徹/矢崎 広)

マーキューシオ(平間 壮一/小野 賢章)

ほか

親友関係に変化が…

2幕序盤、ロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオの3人が中心のアップテンポなナンバー《街のうわさ》。

いつも一緒に行動し、互いを第一に信頼し合う親友同士だった3人。
ですが、ロミオが2人にも知らせずにジュリエットと秘密の結婚式を挙げてしまったことでその関係性にひびが入ってしまいます。

街じゅうでロミオとジュリエットが結婚したという噂が駆け巡り、ベンヴォーリオとマーキューシオはロミオに結婚を取り消すよう詰め寄ります。
「長年の敵であるキャピュレット家の娘と結婚したことは裏切りだ。
なぜジュリエットでなければならないのか、女はほかにもいるだろう、目を覚ませ」と。

一方のロミオは、
「ジュリエットと出会い愛を知った。彼女なしの人生など考えられない」
と、親友の2人にはこの気持ちを分かってもらいたいという思いで、切に訴えます。
しかし、両者の考えは交じり合うことなく溝は深まっていくのみ……。

両者の掛け合いで構成されているこのナンバーから浮かび上がるのは、両親よりも近い存在に思っていた親友、そして街の人たちに気持ちを理解されずに孤立していくロミオ──。
このあとにさらなる事件、悲劇が3人を襲います。

マブの女王

La reine Mab (Je rêve)

マーキューシオ(平間 壮一/小野 賢章)

マーキューシオと言えばこのナンバー!

語りから徐々に盛り上がり、周囲を圧倒させるロックでパワフルな1曲として印象を残す、仮面舞踏会前のマーキューシオのソロナンバー《マブの女王》は、2010年のパリ再演時から追加されたもの。

シェイクスピアの原作で、昨日悪夢を見たと落ち込んでいるロミオに、マーキューシオが夢を操るある妖精の話をします。
それが「マブの女王」です。
(フランス版の原題では、〈 La reine mab (je rêve) 〉「マブの女王(の夢をみた)」と、なっています)
マーキューシオは乗り気でないロミオを、敵対するキャピュレット家で開催される仮面舞踏会へこっそり行って楽しもうと誘います。
危ういことを好む、破天荒な性格。でも誰もが魅力を感じずにはいられない、そんなマーキューシオのキャラクターが大いに反映された、《世界の王》に続くノリのいいロックナンバーです。

どうやって伝えよう

Comment lui dire

ベンヴォーリオ(馬場 徹/矢崎 広)

楽しかった友との日々は帰ってこない…

家族以上に通じ合った親友のロミオ、ベンヴォ―リオ、マーキューシオ。
このまま続くだろうと疑わなかった楽しい日々が一転、キャピュレットとの抗争によりマーキューシオが死に、ロミオが街から追放、ベンヴォーリオは突然1人残されます。

さらに飛び込んできたジュリエットの訃報──
この負の連鎖を断ち切る方法が見つからない不甲斐ない自分、そしてロミオにジュリエットの死をどう伝えたらいいのだろうとベンヴォーリオは苦悩します。
ギターの悲しい音色とベンヴォーリオの歌声が、なんとも言えず涙を誘うベンヴォーリオのソロナンバーです。

娘よ

Avoir une fille

キャピュレット卿(岡 幸二郎)

父が娘に望むものとは──

ジュリエットの父、キャピュレット卿。
2幕のソロ《娘よ》では、愛するロミオが街を追放され打ちひしがれている娘にパリスとの結婚を押し進める身勝手な父親の内に秘められた心情が明かされます。
ジュリエットの涙に、いい夫でも父親でもない我が身を痛感しながらも、お前のためにも、家にとっても幸せとなるためなのだ、「いつかは分かり合える日が来る」と──。

不器用な父親の気持ちを、ドラマティックなメロディーとともに感じてください。

涙の谷

Tu dois te marier

キャピュレット夫人(香寿 たつき)

原作戯曲にはない母の告白が…

悲しげな旋律が響く一幕中盤、キャピュレット夫人のソロ《涙の谷》。
パリス伯爵との結婚話に戸惑う娘ジュリエットに、「結婚するときに愛なんて重要ではない。自らも親が決めた相手と結婚したように、娘であるあなたも同じくそうある運命なのだ」と、説得します。

はじめは冷静だった彼女も次第に感情が高まり、かつてその夫とは別に愛する人がいたこと、そしてその人との間にできた子がジュリエットであることを告白してしまいます…!

原作の戯曲にはない、本作オリジナルの衝撃のエピソードが込められたナンバーです。
もともと本作のキャピュレット夫人は、“母親”というより“女性”の部分が感じられるキャラクターでしたが、このナンバーによりその部分がさらに際立ちます。
そしてジュリエットの、母とは違う、より純粋な愛に向かっていく姿も、さらに際立ってくるのです。

[ 文:金本美代 ]

TOP